百姓

やい、お前達、一体百姓をなんだと思ってたんだ?
仏様とでも思ってたか ああ?
笑わしちゃいけねえや。百姓ぐらい悪ずれした生き物はねんだぜ。
米出せって言や、無え。麦出せって言や、無え。何もかも無えって言うんだ。
ふん、ところがあるんだ。何だってあるんだ。
床板ひっぺがして掘ってみな。そこに無かったら納屋の隅だ。
出てくる、出てくる、瓶に入った米、塩、豆、酒。
山と山の間へ行ってみろ。そこには隠し田だあ。
正直面して、ペコペコ頭下げて嘘をつく。なんでもごまかす。
どっかに戦でもありゃ、すぐ竹槍作って落武者狩りだい。
よく聞きな。百姓ってのはな、けちんぼで、ずるくて、泣き虫で、意地悪で、間抜けで、人殺しだあ。
ちくしょう。おかしくって涙が出らあ。
だがな、こんなケダモノ作りやがったのは一体誰だ?
おめえ達だよ。侍だってんだよ。
ばかやろう。ちくしょう。
戦のためには村あ焼く、田畑踏ん潰す、食い物は取り上げる、人夫にはこき使う、女あさる、手向や殺す。
一体百姓はどうすりゃいいんだ。百姓はどうすりゃいいんだよ。くそー。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう

おれたちはいい百姓だからな。